孫子の兵法における最も有名なフレーズ
孫子の兵法は、計篇(第1)から用間篇(第13)まで非常に多くの知恵が詰まった戦略書です。なかでも、この「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」は、最も多くの人に知られた、有名なフレーズと言って良いと思います。
「敵を知り」のフレーズの全体像
「敵を知り」のフレーズで一番有名なのは、「彼(敵)を知り己を知れば、百戦して危うからず」の部分ですが、こちらのフレーズは前後の文脈と合わせて読むとより一層理解が深まります。
「彼を知り己を知れば、百戦して危うからず」
「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す」
「彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず危うし」
孫子の兵法においては、この3つが実はセットになっています。
こちらの表を見ていただけると比較的わかりやすいと思います。
上から順番に、①敵の実力の把握と自分の実力の把握が両方できている(○)場合、②敵の実力の把握ができていないものの自分の実力の把握ができていない場合(✖️○)、③敵の実力の把握も自分の実力の把握も両方できてない(✖️✖️)場合、と3つのパターンがあるということです。
一番良いのは、敵のことも自分のことも、戦う前にきちんと分析できていることですが、現実には、敵の情報は十分でないけど自分のことだけはきちんと分析できている状況で戦いに挑まざるを得ないケースもありますよね。
最悪なのは敵の実力の把握も自分の分析もできていないパターンで、こちらでは、運に頼るしかない状況で、勝率は下がってしまうので非常にもったいないですね。
敵を知り己を知ることで勝率が上がるメカニズム
なぜ、敵を知り己を知ることが戦いにおける、勝率をあげることができるのか、皆さん何となくは想像されているとは思います。
これについて、私も歴史上の戦いにおける戦術等を見て、考えてきましたが、今ではシンプルにするとメカニズムは以下のようなものかと考えています。
敵には、強みと弱点の両方が誰でもあるものです。何が強みで何が弱点かを知れば、敵の弱点を突くことで勝率を上げることができます。逆に、自分が敵を攻める際には、自分の強みを生かした攻撃をすべきです。
これらの両サイドを組み合わせることができるのであれば、自分の強みで持って、敵の弱点を突く、これが最も自分の勝率を上げることができると考えられるでしょうか。とてもシンプル化したモデルですが、複雑な状況においても、このシンプルな原理原則を頭に置いて、作戦を組み立てることができれば、勝率を上げることにつながるでしょう。
なぜ当たり前に見えて実践が難しいのか?
敵を知り、己を知る。この2つについて誰しも説明を受けたら、その重要性について違和感を持たないと思います。
しかし、実際にこの2つを現実の場面で日常的にきちんと意識して、これを実践できている人は実はそこまで多くないと私は思います。だからこそ、差が出てくるのですが、、。
この実践が意外と難しくなっている理由について私なりに考えているものがあります。
人が、試合だったり試験だったり仕事の重要な場面に挑む際には、皆さん多くの人がその準備のために頑張ると思います。
ただ、準備には大きく2つ、①目の前の作業に一生懸命取り組む(単純な作業の努力)、②取り組むべき作業の前提となる情報を集める(情報分析)、があるんですね。
(説明するために、上の図を作ってみました。)
ここで、多くの人は、一生懸命でプレッシャーの高い時であればあるほど、①単純な作業の努力、にエネルギーを過度に集中させてしまいすぎになる傾向があるように思います。そうすると、②前提となる情報分析、が疎かになってしまうんですね。
一生懸命で努力しているほど、プレッシャーを感じている場面であればあるほど、このワナにはまるように思います。
実際に、私も過去、かなり重要な1年に一度の局面に挑む準備作業の時に、このワナにハマって、死ぬほど頑張ったのに、結果が伴わないという厳しさを味わいました。
残念ながら、①単純な作業の努力量で敵に勝っても、②前提となる情報分析が不十分であれば、敵との実力が拮抗していればいるほど、勝利からは遠ざかることになるでしょう。トータルで頑張った時間の量とかエネルギーの量だけでは、勝てないということなんですね。
いわゆる「精神論」では勝てないという話があると思いますが、それと同じことですね。ただ精神論の反対は何か?ということで敵や自分の把握の重要性を尊重して行動するということがあるということなんですね。
Youtubeでも「敵を知り」について語ってみました。
音声でスマホやPCで何か作業をしながらでも聞いていただけると幸いです。
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